ビル管理上のトラブル実例集
―水漏れ―


CASE@:それはH書店で発生しました!
 H書店は全館本屋さんです。昔のビルでしたので、暖房はボイラーからの温水を、冷房はトラブル@断水のCASEAで述べた水冷方式で各室にあるファンコイルと言う空調機へ送って、冷暖房を行っていました。

 第一報は、深夜、ビルに”火災発生”という情報が電話回線を使用した24時間監視システムに入った。担当者がビルの該当フロアへ行ってみると、天井から水がしたたり落ちていた。その水が火災を感知するセンサー内に入り、異常警報を発していた事が判明。
 その上の階へ行ってみると、床が水浸し状態だった。原因は、暖房時に使用した水が配管内に溜まっていて、冷房により配管内の水が凍結し、パンクした為でした。本来は、冷却時はファンコイル内に溜まっている暖房用の水を全部抜いておくべきだったのですが…。加えて、ファンコイルを無人時には切って帰るべきでした。
 何しろ商品が本でしたから、床面の水をバキュームクリーナーで吸い出した後は布で吸い出し、乾燥させ、翌朝の書店オープンに間に合わせました。しかし、濡れてしまった本は商品価値がなく、保険処理で損害補填は出来たものの、火災センサーも意外なところで役に立ったものだと感心しました。


CASEA:それはIビルで発生しました!
 そのビルは1階が店舗で、2階以上が事務所というビルでした。
 ビルのレイアウトは、共用部にエレベーターが2基、男子トイレ・女子トイレ・湯沸室が各階エレベーターホール脇にあり(共用部)、事務所はエレベーターホールの前にあります。

 第一報は、1階の店舗から。1階天井より臭い水が落ちてくるとの事。上階へ行ってみると、2回のエレベーターホールが水浸しでした。水の発生源は2階女子トイレで、便器から汚物と共に汚水があふれていました。
 原因は、2階から1階への汚水配管に異物が詰まり、3階以上の上階からの汚水が2階へあふれている事によるものでした。さっそく3階以上のトイレ使用禁止を手配し、配水管の詰まり除去作業をする。1階の排水枡で、生理用ナプキンが多量に発見された。これが直接の詰まり物質であるが、どの階から流れたものかは不明。
 2階のエレベーターの汚水を手で拭き取り、1階の天井ボードを部分的に交換し、1階の商品損害補償手続きをする。原因はどこかのテナントのどれかにある。オーナーは被害者であるが、最終処理は管理会社がする。こんな時も含めて、保険の必要性を痛感しました。また、大変臭い思いもしました。


CASEB:それはPマンションで発生しました!
 マンションでも、オーナーが一人で全戸数が賃貸物件の場合は、各室の鍵がオーナー又は管理会社にあり、かつ、費用負担はオーナーか入居者なので非常にわかりやすく対応が早い。しかし、各戸の分譲マンションとなると大変です。まず、各室の入居者と所有者が異なる場合があり、更に所有者が各室ごとに異なった管理会社に各部屋の管理を委託している場合があります。
 トラブルの原因特定は、専用部分か共用部分かを判断する必要があります。専用部分になると、所有者責任か賃借人責任かを、各部屋の管理会社を含めて協議決定してもらう必要があります。そしていざ復旧工事となると、上下階の所有者・入居者・管理会社が工事業者間の調整を必要とします。更に、これに保険会社が入ると、調整作業に大半の時間が取れられて実務がさっぱり進みません。
 当社はPマンションの共用部についての管理会社で、今回は最悪のパターンに該当しました。

 まず、2階の所有者兼入居者より「天井からの水漏れがあるので、見に来て欲しい。」との依頼がありました。図面で調べて直上階の室に行ってみたが、原因が特定できず。その隣の部屋に行ったが、入居者不在につき調査が出来ず。しばらくして水漏れが止まったので、様子を見ることにしました。
 翌土曜日に、また水漏れが発生。直上階とその隣の室も不在。今回は水漏れが多量なので、隣室の所有者に連絡を取り、入居者に至急連絡してくれるように依頼をしたが、所有者は「管理会社にまかせてあるので、入居者は不明。」との事。管理会社に所有者から連絡してもらったが、土曜日だった為に連絡がつかなかった。今度は「所有者に室の鍵を持って現地に来て欲しい」と依頼をしたが、「鍵を持っていない」との事。それならば「鍵屋を呼んで、オーナーに立ち会って欲しい」と依頼をした。そうこうしている内に、偶然にも入居者が戻ってきたので、室に入れてもらった。この時も原因は特定できず。
 直上階及び隣室の入居者より水の使用状況を聞き、水漏れパターンが土曜日の朝に発生するのは洗濯パターンと一致するという事を発見。2階の天井の点検口からでは原因がわからないので、隣室の床面をはがす事に同意をもらう。入居者からは「その間の生活不都合をどうしてくれるのか?」と、所有者からは「原状回復費用をどうしてくれるのか?」と言われたが、……そんな事よりも、原因追求が先だと言う事で床面をはがす。
 床面をはがすと、コンクリートスラブ面がプール状態。原因は風呂場の排水口と排水管の接続口がはずれていた事であった。
 所有者は「排水口は共用部だから、組合の問題だ。」と主張。「規約では”専用室内の配管は専用部分であり、共用扱いは縦管のみ”」と言う事で納得してもらった。所有者は、「それならば、専用部分に関しては保険会社と交渉して欲しい」と言う。それは管理会社の仕事ではなく、所有者・入居者・所有者の管理会社・保険会社の仕事であると区別する。むしろ被害者は2階の入居者で、この原状回復を早くして欲しい旨申出る。すったもんだの末、2階の原状回復が終了したのは1ヶ月後で、その間、2階の入居者は営業に不備を感じながら仕事を続けていた。

 これらの教訓は、”入居者・所有者・所有者の管理会社のリストを完璧にする事”と、”室の鍵を、所有者及びその管理会社が所有している事”、そして”オーナーが依頼する管理会社は、24時間連絡がつく会社を選定する事”などである。また、”オーナー及び入居者は、水漏れ保険にも加入する事”もあげられる。


CASEC:それはMビルで発生しました!
 Mビルは全館飲食店で、問題の発生は地下1階の店舗でした。
 この店は、地下1階の下にある雑排水槽(←ここに地下トイレの汚水・厨房の排水・壁からの地下水などが一度溜まります)を槽内にあるポンプでくみ上げ、地上の下水管へ排出するシステムです。そして、この店の営業形態は中華店で、雑排水槽の保守は店の責任で行う事になっていた。又、厨房から発生する油脂類は、普通グリーストラップでこしてから水槽に入るのですが、そのトラップが無い。配管は店の壁より立ち上がり、店の天井を経由して1階の下水管に  っています。

 問題は、水槽が一杯になり、ポンプが起動してもなかなか槽内の水位が下がらない事だった。このまま営業していると、店舗内の床が汚水で溢れてしまう様子だった。そして不思議な事に、ポンプ起動中は店の壁の奥がザーという水が流れ落ちる音がして、二重壁の排水が水槽に流れ込んで来る。

 まず、二重壁の排水が多いのは恐らく地中の給水管の穴明きによるものと予測し、給水関係を調査する。しかし、何しろ水道局から受水槽(地下2階のコンクリート製)への配管が地中埋没の為、よくわからない。ただ、全店舗が水を使用しない時間帯は水道メーターが廻らないので、給水管ではないだろうと結論付けする。現象から、雑排水槽のポンプ起動と二重壁の排水量に強い相関関係があるので、雑排水管と下水管の間に問題があるのではないかと予測し、調査する。
 店の天井内・点検口より二重壁を覗いて見ると、配管に穴が開き、そこからポンプアップした汚水の一部が二重壁を伝って流れているのを発見。店舗内で多量の水を使用すると、排水しきれない汚水で床が水浸しになる。極力水を使わないようにし、ポンプを連続運転しながら店舗の営業終了時間(23時)を待つ。
 翌日は臨時作業をしてもらうようにしたが、翌々日は予約が入っているので、対応時間は30時間しか残っていない。排水管と下水管は玄関の下を通っているので、ここを壊して排水管を新設するのは無理。とにかく、地下の汚水を地上に上げるルートを確保する事である。下水管に継ってる配管を調査したところ、雨水が継っていた。臨時に雨水トイを切断し、仮説ポンプを雑排水槽内に入れ、ホースをドライエリアを経由して地上に出し、これに接続して次回の店舗休業日を待つ事にする。
 店舗休業日が2日間あったので、水槽内をバキューム清掃し、ポンプを1台より2台に増設、排水管を正規なものにして事無きを得た。


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