ビル管理上のトラブル実例集
―断水―


CASE@:それはWビルで発生しました!
 Wビルはソーシャルビルでいわゆる全テナントが飲食関係、場所は銀座にあり、比較的高級店が入居しているビルでした。

 このビルの給水方式は、地下に受水槽(水道局より配給された水を蓄えておく水槽)があり、受水槽から揚水ポンプを使って屋上にある高架水槽に水を上げています。そして、高架水槽の揚程落差により各階に給水をしています。この方式は、”高架水槽方式(重力方式)”と呼ばれています。
 断水になった原因は、揚水ポンプの不調で、高架水槽に水が上がらなかった為です。
 問題が大きくなったのは、いわゆる水商売と言われるように、水の消費量が多いテナントほど繁盛している事です。水が使えないという事は、即、商売が出来ずに営業補償に発展する可能性があります。
 ポンプ修理をしている間、どこかに高架水槽の水を確保するかが肝要でした。屋上に上がって周囲を見渡すと、偶然にも隣のビルに高架水槽を発見しました。さっそく隣のビルの所有者に事情を説明して、隣の高架水槽の中に仮設水中ポンプを設置し、この水をWビルの高架水槽の中へ送りこんで一件落着しました。
 結果オーライでしたが、店舗に迷惑を掛けないように、ハラハラドキドキの作業でした。当然、隣のビル所有者の協力には感謝でした。




CASEA:それはSビルで発生しました!
 Sビルはいわゆるスーパーマーケットで、年1回の水槽の中を清掃する作業日を店舗の定休日に当てました。

 給水方式はCASE@のビルと同一の高架水槽方式でした。通常の事務所ビルの場合は、高架水槽の水はトイレ・湯沸室・厨房などの限られた場所にしか給水されていません。ところが、Sビルはクーリングタワー(冷却塔)の補給水にも給水されていました。
 冷房をする時、今はほとんど空冷方式ですが、昔はエアコンから発生する熱を除去する目的の冷却水が必要でした。(”水冷方式”)エアコンからの温かい冷却水は冷却塔で冷やして循環し、再度エアコンに送り込まれます。冷却塔では、水の蒸発により水を冷やしますので、蒸発した水を補う為の補給水が必要となります。そして、冷却水がある温度以上になってエアコンの圧縮機をに無理がかかった時、圧縮機の保護の為に冷房は停止となります。
 問題が発生したのは、この水冷方式が食品の冷凍庫に使用されていた為に、中の食品が溶けたり腐ったりした事でした。当日は定休日だったので、水槽清掃の作業員がその仕組みを理解せず、単純に受水槽・高架水槽の清掃作業を終了して帰ってしまいました。
 確かに作業終了後に補給水は復旧していますが、冷凍庫が停止したままであると事には気付きませんでした。(本来はリセットして復旧する必要があった)
 そして翌日スーパーの店員が出社して、初めて事の重大性を発見したのでした。当然スーパーより商品損害の損害賠償が来ました。その処理の為、保険会社の協力を得て損害額の査定に入るわけですが、その後、処理に2週間の作業を費やしました。
 以後、水槽清掃をする時は、水の使用先を事前に調査して、関係者への連絡を密にする必要を痛感しました。



CASEB:それはMビルで発生しました!
 Mビルは事務所ビルで、1階の給水は水道局からの直給水方式。2階以上は受水槽・加圧ポンプがあり、加圧ポンプにより圧力タンクに注水し、空気圧による圧力で給水します。この方式は、”圧力タンク方式”と呼ばれています。尚、加圧ポンプは、受水槽内に設置されていました。

 トラブルの一報は、テナントより「水道の蛇口より熱湯が出てくる」と言う事でした。湯沸器のお湯が混合したくらいに考えていたが、第二報は最上階のテナントより「水が出ない」と言う事でした。
 お湯が出た原因は、ポンプの吐出口配管に穴があいていて水が水槽内でショートサイクルし、ポンプの熱でだんだんお湯になった為でした。
 事務所ビルで断水になって一番困る事は、飲料水が確保できない事ではなく(コンビニでミネラルウォーターなどが買えるから)、トイレが使えない事でした。受水槽内の水を抜いて配管の交換作業をする間、テナントのトイレをどこに確保するかが問題でした。偶然にも、1階が直給水方式だったので、1階テナントに他のテナントのトイレ使用許可をお願いし、配管工事を行いました。
 つくづく、水が当たり前に出る有難さがわかりました。



CASEC:それはマンションBで発生しました!
 給水方式はCASEBと同一の圧力タンク方式でした。
 水は水道局から止水栓・量水器を経て、流水制御弁(ボールタップ・FM弁2つあわせて流水制御弁と言う)により受水槽に水を供給しています。東京地区では受水槽は屋外、北海道地区では室内に設置されています。この様なトラブルは東京地区では考えられなく、仙台での体験です。
 この物件は、東京地区と同じで受水槽が屋外にありました。配管などは寒さを考えて保温してありました。しかし、水槽は保温しません。
 ある夜、水槽内にあるボールタップ(水位調整弁)の所で凍結が発生しました。その為、水位調整作動が動かずに水が供給されず、受水槽が空っぽになってしまいました。ドライヤーで温め、お湯を凍結部に掛けて復旧しました。
 それ以後、寒気の天気予報が出るたびに、どの物件が凍結するかが冷や冷やものでした。やはり、設計時点から地方の特色をよく理解する事が必要である、と痛感しました。


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